【MMニュースNo.4】赤穂でハマベゾウムシ発見。兵庫県で2カ所目。海岸の虫にも、注目!

5月23日、展示に使う虫も採りたかったので、赤穂海浜公園へ調査に行きました。

とてもいいお天気でしたが、虫はおりまへん。

マテバシイやシャリンバイの花に、アオヒメハナムグリ(オキナワコアオハナムグリ)が大量にいます。フタイロカミキリモドキもいた。ほとんど淡路島やな。

でも、白や黄色のちょうちょはあまり飛んでません。

春の虫が終わって、夏の虫が始まる前の、いわゆる端境期ですね。

しかし、思いがけず、ハマベゾウムシが見つかりましたよ。

そのときのおもしろエピソードです。みんなも、海辺へ、GO!

脇村くんが「気になる虫」

虫もおらんし、今日はさっさと帰ろかな、と思いました。

そのとき、海岸を見て、思い出しました。

虫とりに青春を捧げるため(?)北海道の大学へ行ってしまった脇村くんが、「気になる虫」に「ハマベゾウムシ」を挙げていたことを。

兵庫県では、的形で見つかってて、今のところそこだけらしい。「きべりはむし」に書いてありました。

姫路市福泊海岸で得られたアオキツツムネウミハネカクシとハマベゾウムシ

脇村涼太郎, 2020.きべりはむし,43 (1),2020

そういえば、ひとはくの収蔵庫で、標本チェックしてたね。他県の標本をみつけた脇村くんに「ほら、これですよ」と教えてもらいましたが、ふーん、と、気になりませんでした。

「せっかく脇村くんが言うてるんやから、探してみましょか?」

ということで、ほとんど時間つぶし感覚にて、ハマベゾウムシ探索へ。

アマモの下に、おるらしい

しかし、だれも、この虫を見たことがありません。

スマホでぐぐると、4mmくらい。打ち上げられたアマモの下にいるらしい。

浜を見ると、黒く干からびたくしゃくしゃの塊が、あります。

「あのへんのゴミって、そのへんの適当な海藻やないの? アマモ、あるんですかね?・・・」

すると、手に取った高橋弘樹さんが、「これみんな、アマモですよ。」

たしかに、ひっくり返すと、砂の下から緑色の葉っぱが出てきて、それと確認できます。

アマモは、ワカメやヒジキとちがって、単子葉植物なので、ふつうに葉っぱです。

おお、これは、おるかもしれんで。

ひっくり返して探してみよう。探索開始!


『どうんなところにいるんですか? 砂の中?』

「そんなん、知りませんよ。採ったことないねんから。」

『動くんですか?』

「さあ。でも、ゾウムシやから、どうせ、死んだふりとかじゃないですかね?」

「立ったまま見てても、みつかりませんって。砂つぶみたいなヤツやねんから。」

しゃがんで、調べましょう。

『これ、そうですか?』

「ちがうね。そのへんの草にいるハナゾウか何かやね。もうちょっと、大きいと思うで。」

浜辺にいたらハマベゾウムシ、というわけやないからな。柳の下に猫がいたらネコヤナギやないのと同じ。

「おっ、ハマヒョウタンゴミムシダマシ!」

タダゲン探しに行ったら、とりあえずクロゲン出た、みたいな、一歩前進の感じ。

『その虫って、ここに、おるん?・・・』

「わからんから、探してんねんやろ。」

『ゾウムシ愛がないと、みつからへんわ・・・』

「脇村くんが気になるということは、ふつうの人は(細かすぎて)気にならへんということやね・・・」

「真夏にこれやったら、灼熱地獄やな・・・」

など、ぶつぶつ言いながら、背後の松林のハルゼミの声を録音したりして。

第一発見者は、えらい!

そして、開始10分後くらい。

「これ、そうちゃいますか?」

転がっていたトレイの上でアマモをふりふりして探していた、島岡良治さんが、ついに発見!!

実物を見て、色、形、大きさを確認。

つぶらな瞳が、かわいい虫ですね。ぬいぐるみとか、できそう。

いるとわかれば、俄然、やる気が出ます。

すると、つぎつぎと、見つかります。

なんや、けっこう、おるやんか。

1時間足らずの間に、6人で30匹ほど、つかまえました。

昨年6月に、同じようなことをしましたが、そのときは、ヒョウタンゴミムシで盛り上がりました。ヒョウタンゴミムシを探していると、ハマベゾウムシは、目に止まらないですね。

ハマベゾウムシをみつけるコツ

やってるうちにコツがわかってきました。

みつけかたマニュアルを公開しますので、お友達といっしょに、楽しんでください。一人でやってたら、正直、めげます。

浜辺に、ちぎれて流れたアマモの塊が、打ち上げられています。

なるべく大きな塊に、いろんな虫がいます。

というか、まずは、こういう状態でアマモが打ち上がっている海岸を見つけることです。

海釣りしてる人はわかると思いますが、アマモは、あちこちにありますよ。投げるたびにかかってきて、勘弁してくれって思ったり。

つぎに、アマモの塊を持ち上げます。

その時点で見つかることがあるので、まず、よく見ましょう。

アマモは放り投げず、その場で、数回、しゃかしゃかと、砂を落とします。

そこに入っていることもあります。

つぎに、砂を平らにならし、少しずつ、「発掘」していきます。

ここがポイントです。たぶん、そうしないと、見つけられません。

1cmくらいずつ削って、ならしながら、発掘。

あっ!、いた!!

どれどれ。どこですか。見せてください。

って、どこ?

わかります?

リアルに、こんな感じですよ。

砂を平らにならす意味が、おわかりいただけるでしょうか。

その気になって探さないと、ぜったいに、みつかりません。

でも、一度みつけたら、虫の色や形、いたときの状況を脳が記憶し、つぎからはよく判別してくれるようになります。虫屋の経験値、っちゅうやつですね。

砂つぶよりは、大きいです。

ひっくり返ってることもあります。

これは、掘り出した状態ですが、発掘面に一部が現れる状態で、みつかります。

こうやって調べると、ハマベゾウムシ以外にも、いろんな海浜性の虫がみつかって、宝探し感覚で、それなりに楽しいです。熱中症注意。

浜の虫さがし、チャンスかも

ここの浜は、赤穂海浜公園ではなく、赤穂唐船(からせん)サンビーチといいます。

例年だと、潮干狩りでにぎわっているようです。

2021年も、2020年に引き続き、新型コロナウイルスのため、潮干狩りは中止。

過去のようすをググってみると、ものすごい人出です。

潮干狩り営業中だったら、虫さがしはしにくく、海岸のゴミも、お掃除されていたかもしれません。

そう思うとやや複雑な気分ですが、浜の虫さがしは、今、チャンスかも。


本日の調査員:内田隼人・島岡良治・島岡佳子・島岡 優・高橋弘樹・八木 剛(記)


※ ハマベゾウムシは、いくつかの県でレッドデータブックに掲載されています。兵庫県では、前回2012年の改訂時、本種の生息情報がありませんでした。今後のみなさんからの情報に期待です。(2023の改訂で要注目種になりました。)